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RADWIMPS世代歓喜「me me she男たち」の極上の優しさを感じる映画 

佐藤由紀奈

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佐藤由紀奈

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18歳の時、本命の大学受験の前日は『へっくしゅん』を聴いて、自分の中の劣等感と反骨精神を高めていた。

憧れの美大に入学したけれど、自分の圧倒的な才能の無さに絶望。それでも夢は諦めたくないと足掻いていた時には『夢番地』を聴いて静かに泣いた。

失恋をした時には、『me me she』を聴いて、元恋人への未練を「ありがとう」という感謝にどうにか昇華させようとしていたな。

……つまり何が言いたいかと言うと、わたしの10代後半~20代前半くらいの思い出には、結構な頻度でRADWIMPSの歌がセットになっている。
RADWIMPSの歌に多大な影響を受けてきた、まさにRADWIMPS世代なのだ。

RADWIMPS激動の3カ月を映したドキュメンタリー映画が公開中

3月11日(金)から公開されているRADWIMPSの ドキュメンタリー映画『RADWIMPSのHE・SO・NO・O Documentary Film』。

本作は、昨年10月からの、アジア・ヨーロッパツアー(韓国、フランス、ドイツ、イギリス、台湾/5か国6公演)と、きのこ帝国、plenty、LOVE PSYCHEDELICO、ゲスの極み乙女。、ハナレグミ、クリープハイプ、Spitz、いきものがかり、ONE OK ROCK、Mr.Childrenという、彼らがリスペクトする豪華アーティストを招いて行われた国内の胎盤(対バン)ツアー、そして10周年の集大成とも言える幕張メッセでのワンマンライブを追ったドキュメンタリー作品。
ツアー直前にドラマーの山口智史が持病の神経症が悪化したため、無期限休養を発表するというバンドの危機を迎えながらも、必死に“今”を駆け抜ける激動の3カ月が映し出されている。

RADWIMPSの、周りに“恋”をさせる力

映画の見どころは数多くあれども、RADWIMPSを支えるたくさんのスタッフたちの姿が特に印象的だった。
みんな例外なく、RADWIMPSのことを語る時の表情・言葉に、愛が溢れているのだ。

RADWIMPSのチーフマネージャー・塚原聡さんのインタビューで「ヒトメボレに近い」という言葉があったのだが、これには激しく同感。
わたしも初めて彼らの音楽を聴いた時に、「あ、これ、好きだ」と、直感してしまったのを思い出す。
“RADWIMPSが大好きな大人たち”に囲まれて、彼らの音楽はわたしたちの元へ届いているんだなあ、ということが知れる、貴重な映像となっている。

名だたる表現者からも賞賛の声

また、スタッフだけではなく、同業者や、表現者たちをも、彼らに恋をしているというのが、よくわかる。

本作に対しては、大竹しのぶ、宮沢りえをはじめ、胎盤ツアーで対バンしたLOVE PSYCHEDELICOのKUMI、クリープハイプの尾崎世界観など、名だたる表現者たちが賞賛の声を寄せている。

KUMI (LOVE PSYCHEDELICO)

「あんなに純粋な気持ちが
あんなに純粋なまま
聴くものの無垢な心に響く
それはとても美しい情景だった」

尾崎世界観(クリープハイプ)

「ツアーに誘って貰えて本当に嬉しかったです。何よりRADのライブをみれた事が。こんな機会じゃないと、悔しくてみれなかったから。打ち上げで話をしている時、ずっと「うわぁ、野田洋次郎だぁ…」と思っていました。10代の頃に戻してくれてありがとうございます。また一緒にやれるように頑張ります」

尾崎世界観が話すように、RADWIMPSを聴くと、一気に10代の頃の自分がフラッシュバックする。
たぶん、実際に10代の頃に聴いていなかったとしても、「10代っぽい弱さを思い出す」ということなのだと思うけれど。

RADWIMPSが歌う、女々しいオトコは最高に優しい

あまりメディアに登場しない彼らの、裏側や素顔が見られる本作。
楽屋での会話や、何気ないやりとりから、本当に仲のいいバンドであることが伝わってくる。
わたしは彼らのプライベートなんて何も知らない一ファンだけれど、きっとみんな、優しい男たちなんだろうな、と思う。
劇中、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIが「みんなハートが柔らかい」と語っているが、彼らの繊細さが伝わってくる表現だと思う。

だいたいにしろ、RADWIMPSの楽曲を聴いていれば、彼らが圧倒的に“弱いオトコ”であることは明白だ。
でも、だからいい。
冒頭に『me me she』という曲に少し触れているけれど、わたしはあの曲に出てくる、恋人を引きずりまくり、とことん女々しい“僕”が愛しくてたまらなかった。
わたしだって本当は、好きな人と「100歳までよろしくね」なんていう恋がしたかったのだ。
でもそれは、当時の恋人には言えなかった。

普通は重すぎて自分でも引くようなドロドロした感情を、RADWIMPSがとても純粋でキラキラした曲にしてくれるものだから、「悪くないはずだよね」と思える。
彼らの弱さは、とことん人に優しいのだ。

弱い自分と向き合える、センチメンタルな2週間

この映画を見て、思う。
彼らも自分も、もう大人になった。“今”を生きている。
でも、彼らが生んだ歌と、その歌に影響を受けた頃の自分は、ずっとずっと、変わらず残り続けていくんだなあ、と。

だからこれは、RADWIMPSの“現状”を知るための映画でもあり、RADWIMPSの“本質”を知るための映画でもあり、RADWIMPSの歌に影響を受けてきた“自分”をもう一度思い出すことのできる映画でもあるのだ。

映画『RADWIMPSのHE・SO・NO・O Documentary Film』は、3月11日(金)~3月24日(木)まで、2週間限定ロードショー。

(文:佐藤由紀奈)

『RADWIMPSのHE・SO・NO・O Documentary Film』
2016年3月11日(金)~3月24日(木)ロードショー  
監督:朝倉加葉子    
配給:東宝映像事業部
コピーライト:©2016“HESONOO”FILM PARTNERS 
公式サイトURL: RADWIMPSNOHESONOO.jp

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