インフルエンサーの実態を探るべく、Instagramを中心に活動している女性3人をお呼びして座談会を開催したソーシャルトレンドニュース編集部。
前回の記事、『現役インフルエンサーに、仕事内容と本音について聞いてみた』では、インフルエンサーというお仕事の基本的な部分を中心にお聞きしました。
話が進むにつれ、アレもコレもと、どんどん白熱していく座談会現場……! インフルエンサーとして、いち社会人として。仕事をしていく上で、依頼主や代理店の担当者に、思うところがたくさんあったようです。
今回はそんな、インフルエンサーの“切なる本音”の部分をさらに深堀り! インフルエンサーマーケティングに興味をお持ちの方には、おそらく必見の内容となっています!!
今回お話を聞いた方々
Aさん(匿名)…20代/Instagramフォロワー約5万人
Bさん(匿名)…20代/Instagramフォロワー約2万人
Cさん(匿名)…20代/Instagramフォロワー約8万人
依頼主に言いたい!インフルエンサーからのクレーム10連発
【1】インフルエンサー=だらしないと思わないで!
Aさん「この1年くらいで、案件を受ける側も依頼する側も、一気に裾野が広がったと感じます。その中で、周りのインフルエンサーに対して、『クライアント様に失礼になっちゃう!』という意味でヒヤヒヤすることが増えました。最近あったことでいうと、メイクイベントに子ども連れで来て、コスメの目の前で平気でお菓子を食べさせていた時は驚きました……。普通に考えたら、衛生面とか、NGじゃないですか」
Cさん「そういうことは結構頻繁にあります。私はとある方のトークイベントにご招待いただいた時、1時間のイベント中、ずーっと喋っているインフルエンサーを見かけました。ここはカフェじゃないよ!って思っちゃいましたね(苦笑)」
Bさん「時間厳守って言われているのに、平気で遅れてくる人もいますね。そういう一部の人達のせいで、“インフルエンサー=だらしがない”という風に思われてしまうのは残念です」
【2】プロじゃないからって、雑な依頼はやめて!
Bさん「私たちが普段やっていることって、商品をいただいて、みんなが当たり前に持っているスマホで撮影をして、それを自分のアカウントで投稿して……ということなので、特別な原価がかかっているわけではありません。決して撮影のプロでもない。でも、だからといって、『良いじゃん、これくらいやってくれたって』と言わんばかりに、依頼の仕方が雑だなと感じられてしまうのは、いかがなものかと思います」
Aさん「私たちも、いち社会人なので、仕事としてしっかりやりとりしたい気持ちがあります。インスタのDMでやりとりしていると、いきなり絵文字やくだけた表現を使ってくる方がいらっしゃるのですが……正直、『いや、友達じゃねーし!』と思ってしまいますね……」
【3】ロクに使ってもいないのに、感想は書けない!
Cさん「スキンケアやダイエット系の商品などは特にそうなのですが、初めて送っていただいた商品について、次の日までに使用感を入れて下書きを提出してください!というオーダーは無茶振りです。まだ変化も実感していないのに、リアルな感想なんて書けるわけがない。言葉に真実味がなければ、誰にも響かないですよね」
Aさん「私は以前、サプリを送っていただいて、即日下書きを送ってくださいという依頼を受けたことがあります。感想を書くのはウソになってしまうので、仕方なく『○○にいいらしいので、今日からはじめてみます!』という表現にしました……」
【4】投稿日は簡単に変えないで!
Cさん「時々、予定していた投稿日を急に変更してください、と言われることがあります。これは、すごく困ります。こちらとしては、フォロワーさんに違和感を与える恐れのある(広告色の強い)投稿の2,3個前から、興味を持ってもらえるようなオーガニック投稿を増やすように気を付けているんです。この日はこれを投稿して、この日はこれ……と、かなり緻密に計画している。それなのに、先方都合で直前に投稿日が延期になるということがあると、もう……」
Bさん「個人のアカウントだから、いつでも投稿できると思われてしまっているんでしょうね。でもインフルエンサーは、自分のアカウントの最適な投稿時間を分かっているものなんです。投稿延期はもちろん避けたいですが、自分たちがベストだと思うタイミングで投稿できる自由度があれば、なお嬉しいですね」
【5】リアルタイムで最適な調整をさせてほしい!
Aさん「私たちは普段、投稿前に写真と文章を提出する“下書きチェック”を行うことが多いです。そこでOKをいただけたものを投稿するわけなのですが、『下書きから一言一句変えないでくれ』と言われることがあります。臨機応変に対応できないのは、ちょっと苦しいですね……。たとえば、投稿の直前で発生したユーザーとのやりとりとの兼ね合いで、そこに触れないのはおかしいと思われてしまう、なんてこともあります。日差しのある中で撮影をした案件の投稿日が、残念ながら大雨だった時には、さすがに担当者の方に『投稿日を変更したい』と相談しました……」
【6】 “インスタ映え”意識しすぎなイベントは微妙!
Aさん「最近のイベントで思うのは、いわゆる“インスタ映え”を意識しすぎていることが多くて、参加した子がみんな同じような写真になってしまいがち、ということ。インフルエンサーを呼ぶ意味って、そうじゃないんじゃないかな、と思うことがありますね。文章だけじゃなく、写真の撮り方や加工にも個性があります。それぞれが工夫したくなるような余白の部分を作ってほしい」
Bさん「お洒落であっても、撮影しづらい空間でのイベントで困ることもあります。以前行ったとあるイベント会場は間接照明しかなくて、iPhoneで撮影をすると顔が真っ暗になってしまったんです。その時は別のインフルエンサーの子にカメラを貸してもらって事なきを得たのですが、どうしようかと思いました……。雰囲気は確かにいいですが、写真を撮らせることが目的なら、ある程度きちんとした照明を設置していただかないと、難しいですね」
【7】フォロワー数だけで判断しないで!
Bさん「フォロワーは数だけじゃなく、内訳もかなり重要だと思っています。ここにいる3人のフォロワーは、90%以上が同世代の女性。これはInstagramのインサイト(*)で確認できます」
*インサイト…Instagramが公式に提供している分析ツール。自分のアカウントのフォロワー属性などが確認できる。
Aさん「人によっては、半分以上のフォロワーが男性というアカウントもあるわけです。そういう人たちとフォロワー数で区切られて同列になるのは、違うんじゃないかと思います。でも実際には、フォロワー数の順番だけで選ばれたのかなと思うことも多く、モヤッとします」
Cさん「男性にコスメの投稿を見せても、つくコメントは『可愛いね』などがメイン。それじゃ売れるわけがないですから、どういうフォロワーがいるのかを把握した上で私たちにオファーしていただけたら、理想的ですね」
【8】再投稿は絶対にあり得ない!
Aさん「Instagramでのインフルエンサーマーケティングが広まってきて、下書きチェックはどこも厳しくなってきました。でも、それ自体は止めてほしいとは思いません。むしろ逆で、投稿してから削除や再投稿してほしいという依頼を受けるよりは、よっぽどマシです」
Cさん「再投稿は、私たちにとって最もあり得ないことのひとつです。いつも反応してくれているフォロワーさんが見てくれた後に、削除して再投稿はしたくありません。PRでミスがあったんだなと思われてしまうし、すでに見たものにもう1回反応しようとは、思わないじゃないですか。実際、再投稿した場合はいいねやコメントの数がかなり減ってしまうんです。依頼主にとっても効果が下がってしまいますし、私たちとしてもイメージが悪くなってしまうので、できるだけそうならないよう、事前にすべてチェックしきってほしい」
【9】広告コピーのハッシュタグはイケてない!
Bさん「時々、『この#(ハッシュタグ)は必須でつけてください』という依頼をいただくのですが、その内容がたまに……本当にイケてないなって思ってしまうことがあります」
Aさん「広告で使っているキャッチコピーとか、キャンペーンタイトルとかですね。それ自体がダサイというよりは、やっぱり“インスタっぽさ”ってあるじゃないですか。その中で広告のコピーって、ものすごく浮いてしまうんですよね」
Cさん「せっかく考えたキャッチコピーですから、活用したいのも分かるのですが、そのままハッシュタグにしても違和感があります。そこのプランニングはもう少し頑張っていただきたいし、それこそインフルエンサーに提案してもらうのもアリじゃないかと思いますね」
【10】インフルエンサー=広告ではない!
Bさん「キャプションの文章を細かく指定されたりするのは、エンゲージメントを下げることになり兼ねないですし、何よりみんなが見ていて変だと思うんです。同じような文章ばっかり並ぶのって」
Aさん「全員同じような文章なら、インフルエンサーを使う意味がないですよね。今こうやって、私たちにいただけるお仕事が増えたのは、従来だったらマスメディアにかけていた広告費を効果的に使うために、ターゲット層(若い女性)がより多く見ていそうなところにお金を使い始めたからということも理由の1つだと思うんです。だから、今までテレビや雑誌の広告を担当していた方たちの概念が、そのままInstagramに応用されてしまっているように感じます」
Bさん「それがどんなアカウントかといった部分には関知せず、“500人分の枠を買いました、こんな風に表示させれば情報がたくさん行き渡るよね”という認識なんでしょうね」
Aさん「でも、Instagramは、オーガニックでファンがつく個々のメディアです。広告としてインフルエンサーを使ってしまうと、見ている方からも違和感がある。それに、私には私なりの写真の加工や言葉の使い方があって、アカウントをこんな風に成長させていきたいという想いもあります。Instagramは広告枠ではなく、私たちが時間と工夫を凝らして育ててきた個人メディアであるという認識を、もっと持っていただきたいですね」
フォロワーが不信感を持ち始めている?
Cさん「近頃、InstagramのPR案件に不信感を持たれているのでは……と感じることが増えてきました。それは、先ほど言ったように、インフルエンサー自身の言葉ではない投稿が多くなってきてしまっていることを、フォロワーさんたちが気付き始めたからじゃないかと思うんです」
Bさん「フォロワーが実際どう思っているかって、外からは見えづらいんですが、インサイトを見るとはっきりします。表面上のいいねの数が同じでも、こちらが本当にいいと思って載せたものは、保存している数が圧倒的に多くなる傾向にあるんです」
Aさん「PR案件であっても、自分たちらしい投稿ができた時は、ちゃんと保存されているし、フォロワーの心に届いていることがわかります。なので、本当に販促をしたいと思うのなら、インフルエンサーが企業の商品担当の方から説明をしっかり聞けるような場を設けていただくのがいいと思います。しっかり魅力を理解したうえで、自分なりの文章を作った方が、効果も出やすいからです」
Cさん「特にコスメは、見た目が可愛いよね!だけで終わってしまうよりも、どんな成分が使われていて、お肌への影響はどうなのか……など、ちゃんと商品のよさを知りたいと思っているフォロワーさんは多いです。そういう人たちにとって、役に立つような発信をしたいと思っています」
“新しい発信場所”を求めるインフルエンサーたち
Cさん「Instagramの流行にあわせて、最近はそればっかりでしたが、改めて、本当に信頼してくれている人たちが、本当に求めている情報を集められる場所を作りたいと思っていて……。私は最近、久しぶりにブログをはじめました」
Aさん「私も! もう1回はじめようと思っています。Instagramは世界観重視である分、情報のボリュームがどうしても少なくなってしまう。それに、本当に役立つ情報が、イコールお洒落とは限らないから、Instagramに載せることを避けてしまうのも事実です。そういう時のための情報の保管先として、ブログが活用できれば、と思っています」
インフルエンサーのこれから
まだまだ話が止まらない!といった様子の彼女たちでしたが、それはインフルエンサーとして、しっかり依頼主の期待に応えたいという想いがあるからこそ。本質的でない、上辺だけの仕事は無くしたいという意志が感じられます。
Instagramは、それぞれがフォロワーとコミュニケーションを取りながら育てていく個のメディアであるということ。そしてインフルエンサーたちは、そこにこだわりを持っている人たちだからこそ、影響力を発揮できるのだということ。今回の座談会は、あらためてそのことが確認できた機会となりました。
(文・ソーシャルトレンドニュース編集部)