ガールズバンドのボーカル、YouTuber、モデル、タレント。
いくつもの肩書きを持ちながら、マルチな活躍で、10代女子を中心に熱狂的なファン層を確立しているインフルエンサー、佐藤ノアさん。
どのようにメディアを使い分けながらファンを獲得してきたのか、また、一人のインフルエンサーとしてPR案件をどのようにとらえているのかなど、様々なお話を聞かせてもらいました。
Twitterは飾らない言葉でファンの“共感”を生む
――TwitterからYouTubeなど、複数のSNSを運用されているかと思いますが、どのように使い分けを意識して運用されていますか?
ノアさん:Twitterでどういう人が伸びるかと言ったら、やっぱり専門分野に強い人と、共感できることをつぶやく人なんです。
Twitterでは写真や言葉を拡散してもらって私の事を知ってもらえればいいなあと思っているので、飾らない言葉、本当に私から出てくるそのままの言葉をツイートしています。あとそれに当たって気をつけている事を一つ挙げるすれば、主語のないツイートをわざとするようにしていますね。
――主語のないツイートというと?
ノアさん:例えば鍵を無くしたとするじゃないですか。
「いやぁ、無くしてから需要が分かる」みたいな主語のないことをつぶやくんです。そうすると、読んでいる人は自分の中の何かに当てはめて解釈してくれるので、リツイートが伸びるんですよ。
今Twitterでは、あえて自分の言葉は使わず、他人のツイートに対していいねやリツイートをする事で友達や好きな人に気持ちを伝えようとしている人が、以前より少し増えた気がします。この間、「ダセぇなー」みたいなことをつぶやいた時は、それだけで1万いいねを超えて驚きました。
――それだけで1万いいね……!驚異的ですね……!でもそれって、ツイートを見る人にも似たような気持ちがあったということですよね。
ノアさん:そうです。大体みんな、何かしらツラい思いは抱えていると思うので、ちょっと不幸なことつぶやくと伸びやすいのかな、なんて。(笑)。
あとは、拡散してもらうのが目的なので、自分のフォロワーに「広めて―!」って素直に頼んじゃいます。昨日ツイートした「髪の毛紫にしました」っていうつぶやきも、1000リツイート超えてますね。
※取材した10月25日時点
髪紫なりましたよっと´•.̫ • `💜 pic.twitter.com/3TdFCWnZUa
— 佐藤ノア(suga/es) (@sugales_noah) 2018年10月24日
ノアさん:このように、Twitterは私の素の部分を感じてもらって、フォロワーに身近に思ってもらえる場にしています。なので、PR案件はあまり受けてないんです。たまにはありますけど!
YouTubeは新規層を巻き込む武器に
――YouTubeはどのような目的で運用されていますか?
ノアさん:YouTubeを始める時に、女の子のファン獲得のための自分の武器にしたいなあと思いついて、メイクに絞ったらいいなと考えたんです。なので、色々悩んだのですが美容系をメインに扱うアカウントにしました。
ノアさん:でも、私という人間そのものにファンがつかないと意味がないので、メイクについての方法だけでなく、カメラを撮っているスタッフとの雑談も入れたチャンネルにしています。「最近こんなことあったんだよね」のような普通の会話が繰り広げられるという。
メイク動画にしては雑談が多いと思うんですけど、それがキッカケで知ってもらえて「意外と喋るんだね〜」なんて言われたりします。
ノアさん:私は Instagramキッカケで知ってくれる方が多いので、そういう方がYouTubeを見ると、「めちゃめちゃしゃべるじゃん!声も低いし!」みたいに、ギャップを感じて好きになってくれる人も多くいるみたいでとても嬉しいです。
SNSで見せる私は基本強い言葉を選んでいるので尖っている感じだと思われることもありますが、会うとそうでもないので、それもまたギャップだねなんて言ってもらえます。
――今では、YouTubeキッカケでファンになってくれる方も多いのでは?
ノアさん:そうですね。今、街とかを歩いていると、ダントツで「いつもYouTube見てます!」って声をかけてもらうことが多いです。
YouTubeのいいところは、新しい層にリーチが取れるところと、その中でも若い人たちにアプローチが出来るところ。
ターゲットを自分よりもちょっとお姉さん向けとか、中学生向けに絞って、それぞれに向けた企画動画を作ったりもしています。
Instagramはファンとのコミュニケーションの場
ノアさん:Instagramは一番こだわっていて、私にとって実験の場のような感じです。最近では心理学で学んだ、“単純接触効果”を実践しています。
――“単純接触効果”、と言いますと?
ノアさん:私のInstagramアカウントには1日何千件ものDMが来るんですが、全てに既読を付けているんです。逆の立場だったら既読がついていたら嬉しいじゃないですか。あと1日で私に触れる機会が多ければ多いほど私について考えてもらえるかなって。
中には、おはようからおやすみまで、LINEみたいにメッセージを送ってくれる方もいますね。もはや日記みたいになっている方もいたりします。
――それにも全部に目を通しているんですか?
ノアさん:はい。こうやって全部承認してるんです。今Instagramを見てみても、未読がもう6件しかないですね。
――本当だ……!
(佐藤ノアさんのスマホを見せてもらい、大量にあるDMの受信画面に驚く編集部一同)
ノアさん:最近だと、「#佐藤ノア布教運動」というハッシュタグをファンに拡散してもらって、フォロワーを増やすチャレンジもしましたね。
ファンをインフルエンサーにして私を広めてもらう取り組みなんですが、フォロワーの方々が協力的に広めてくれて、予想していたよりも早く目標としていたフォロワー数を突破しました。
ノアさん:もちろん「広めてください」って言うだけじゃだめなので、「『#佐藤ノア布教運動』で広めてくれたらいいねします」と広報して、本当に全部いいねをしに行くんです。
あとは、「たまにコメントしにいきます」って言って、その様子をちゃんと画面録画して、ストーリーに載せたり……。こういった取り組みもあって、ちゃんと私から反応が来るからなのかな?どんどん布教活動が連鎖していきました。
Instagramは、一つひとつファンを巻き込んで、イベント化することで盛り上げています。
時間をかけた分、ファンの熱量は上がる
――お話を聞いていて、ファンコミュニティーが、かなり強固に作り上げられているように感じられました。この状態をどのように作り上げていったのでしょうか?
ノアさん:私は、ファンがどれだけその人を好きになるか=拘束時間だと思っています。
そういう視点で見ると、InstagramってYouTubeやTwitterに比べて、一番時間のかからない媒体なんですよね。ビジュアルでパッと見ることができてしまう。Instagramでフォロワーがたくさんいる人でも、イベントなどの集客にはあまり向かないと言われている理由は、ここにあると思っています。フォロワーがその人に時間をかけてないんです。
Twitterだったら、ちゃんと文章読まなきゃいけないし、YouTubeだったらある程度の時間の動画を見なきゃいけない。人って時間をかければかけるほど、すごく好きになって、どんどん会いたいって気持ちが高まるんじゃないかと私は思っていて。
私は、私がキッカケで所属しているバンドに興味を持ってもらえたらな、なんてことも考えているので、一つひとつのSNSに、佐藤ノアに時間をかけてもらえるよう、そういった工夫を惜しまないですね。
熱狂的な“2割”のファンを味方につける
――ファンから見た佐藤ノアさんは、もはや友達のような身近な存在になっているのでしょうか?
ノアさん:いや、友達と言うよりも、日常の一部として受け入れてくれていると思います。
――それってどういう感覚なんでしょうか?
ノアさん:朝から晩まで、佐藤ノアになっている方もいます。なかでも、特に私を好きでいてくれるファンの方は、私と似た服を着るし、同じメイク用品を使うし、同じような髪型にしてくれています。だからイベントとかをやると私のファンの人ってすぐ分かりますね。(笑)
――そこまで熱狂的なファンを、どのようにして獲得したんですか?
ノアさん:恐らく2割が熱狂的な方で、あとの8割は私のことが好きな、一般的なファンだと思うんですね。この“熱狂的な2割”をいかに獲得するかを大切にしています。
例えば、私は毎日ツイキャスをやっているんですけど、今って、ツイキャスってあまりメジャーではないじゃないですか。
――確かに、以前ほどアクティブに使われているイメージはないです。
ノアさん:そうなんです。今はみんな、インスタライブとかにアクティブユーザーが流れてしまっていますよね。普通にインスタライブで私が顔出しすると2000人くらい視聴者が集まりますが、ありがたいことにコメントが多くて、とてもじゃないけど全部は読めません。
そこで、あえてツイキャスという媒体を使って、通知を出さないようにして配信するんです。そうすると、本当に一部のコアなファンしか見られないクローズな場になるので、「こういう案件が決まったよ!」「よかったら広めてほしいな~」みたいな、大切なことを発表しています。
ノアさん:熱狂的な2割を大切にして離さないことで、他の8割を巻き込みながら、SNSに取り組んでいます。実際に2割の人たちは本当に大切で私にとってかかすことの出来ない存在です。
PR案件こそ、嘘はつかない
――とはいえ、複数のSNSの運用でかなり忙しいと思うのですが、実際、大変だなあと思う瞬間は無いのですか?
ノアさん:全て先行投資だと思っているので、特に大変だとは思いませんね。私の場合、大きい案件の仕事が入ってきて、それをファンの方に報告して喜んでもらえる好循環が出来あがっているので、そのために時間を使うことが全然苦ではありません。
あとは、案件をやるにあたって、私は絶対に嘘をつかないと決めていて、ファンとの信頼関係が出来あがっているのも強いと思います。
仕事を受けるにしても、自分が元々使っていたものか、これから使いたいものしか受けません。
もし、興味のある商材が相談で来たら、自分が先に買いに行って試してみて、そこから可否を決めたりもします。ファンもそれを分かってくれているので、購買率が高いと企業さんから言っていただけます。
ノアさん:実は先月は、YouTubeがほとんど案件動画だったんですが、コメント欄がとても平和でした。「ノアちゃんが紹介したものだから安心して買えます」って言ってくれる方もいて、私自身も嬉しかったですね。
自分の強みを自分で語れるインフルエンサーに
――インフルエンサーとして「こうありたい」という理想像はありますか?
ノアさん:私はとにかく自分にしかできないことをやる、そして自分の言葉で喋れるインフルエンサーになりたいと思っています。「よく理由は分からないけど、フォロワーが何十万人います」っていう感じには、なりたくなくて。
ちゃんと企業さんに、「自分が伸びるためにやってきたこと・やっていること」を伝えられるインフルエンサーでいたいんです。
――これまでのお話でも、いかに全ての発信に意思を持って取り組んでいるかがうかがえました。最後に、将来的に頑張りたいこと、最終目標などがあれば教えてください。
ノアさん:最終目標はあえて決めないようにしているんです。21歳の今、最終目標を決めちゃうのってもったいなって思っていて。
でも、プリクラの外装がやりたいとか、パジャマの仕事がしたいとか……とにかく今やりたいと思う仕事を口に出しています。そうやって、目の前のやりたいことをどんどんこなしていけばいく程、自分の目標もさらに大きくなっていくことが分かっているからです。
とにかく、今やりたい仕事を絶対に叶えるっていうのが信念としてありますね。言えば叶うという、強い自信があるのも、自分のよいところだと思っています。
“戦略性”と“信念”が、ファンとの信頼関係を作り上げる
こちらが用意した質問全てに、自分の言葉で真摯に回答してくれた佐藤ノアさん。
その言葉の全てに裏付けられる、戦略性や信念によって、ここまでファンや企業との信頼関係を強固に築いてきたのだと感じさせられるインタビューとなりました。
(文:奥村千尋)