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宮沢りえ7年ぶりの主演作『紙の月』舞台挨拶で涙。スクリーンに映らない美しさに感動

小峰克彦

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小峰克彦

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「また一緒に旅に出ましょう。この映画に携わったスタッフもまた、そう思っているはずです」

11月15日の公開初日、丸の内ピカデリーで行われた映画『紙の月』の舞台挨拶。本作の吉田大八監督が主演の宮沢りえに宛てて、壇上で読み上げた手紙の一節。映画作りを旅に例えたフレーズが耳に残る。

その瞬間、こらえきれず涙する主演女優、宮沢りえにそっとハンカチを差し出す池松壮亮。 彼女を追い詰める役柄であった大島優子も、映画の外では結婚式で泣いている姉を見るような温かい表情で微笑む。

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映画『紙の月』は第27回東京国際映画祭コンペティション部門で最優秀女優賞&観客賞の2冠を達成した。『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督の最新作であり、宮沢りえの7年ぶりの映画主演作とあって期待値が高く、満を持しての公開となった。本作を観終わり、客席も余韻が抜けない様子。

壇上には吉田大八監督、宮沢りえ、池松壮亮、大島優子の他に小林聡美、田辺誠一、近藤芳正らメインキャストが並ぶ。 中でも大島優子は印象的だった。「ゆうこー!」というAKB48時代からのファンの掛け声も挙がる中、それに当時のようには応じず、凛とまっすぐ客席を見つめる姿に、アイドルではなくこれからの日本映画界を背負う女優としてステージに立とうとでもしているような気概が伝わってくる。

角田光代のベストセラー小説の映画化である本作は、銀行で契約社員として真面目に働いていた主婦・梨花(宮沢りえ)が、年下の不倫相手のために巨額の横領事件を引き起こすヒューマン・サスペンスである。 内容が暗く、人間の本質をあぶり出す作品であればあるほど、映画の現場での結束や信頼関係、そして撮影のとき以外は明るい雰囲気作りが必要になるだろう。

宮沢りえは池松壮亮が「盗みたいくらい」と評するくらい撮影現場で元気だったという。お芝居に入れ込むだけでなく、主演女優として現場の空気を明るくしていたことがうかがえる。 舞台挨拶中もかみしめるようにゆっくり客席を見渡し、監督からの言葉に「ブスになっちゃった」と自ら口にしてしまうほどに泣きはらした彼女は美しく、この作品において単なる「宣伝」とは違う、この場に居合わせた人に対し価値を添えていたように思う。

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他にも田辺誠一と小林聡美の掛け合いに笑いが生まれ、宮沢りえが「近藤芳正さんのユーモアが欲しい」と切望する。このトークを見ただけで現場の和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる。

近年、映画館に足を運ぶ人が減っている。レンタルの方が断然安いから、と観たい映画を待つ人がいる。しかし最近は舞台挨拶やトークイベントがついた回も多い。今回の素のキャストと監督の姿を見て、そんな映画館のイベントに是非とも足を運んで欲しいと思った。

吉田大八監督が宮沢りえと再び旅に出て、無事帰ってきて舞台挨拶をする時、僕は仕事でなくとも必ず映画館に足を運ぶだろう。 何年経っても自分の感情に少女のように正直で、映画に誠実であろう彼女の、スクリーンとはまた違った、美しい表情がそこでは観られるに違いないからだ。

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(文:小峰克彦)

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